慶應義塾大学医学部 眼科学教室
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研究グループ

近視臨床疫学グループ

近視臨床疫学グループ
(Myopia Clinical and Epidemiological research group)

メンバー

チーフ : 鳥居 秀成
メンバー : 森紀 和子、四倉 絵里沙、小川 護、羽入田 明子、ハズラデバブラタ、丸山 智生、重野 雄太、福田 このみ、印波 知美、大山 汐穂美、竹内 理香子、中島 由利菜

研究テーマ

近視実態調査と近視進行抑制

近年、近視人口・強度近視人口の増加が世界的に問題になっており(Holden B. et al. Ophthalmology. 2016)、我々のグループは日本においても東京の1小学校の近視有病率が76.5%、1中学校の近視有病率が94.9%であることを報告(Yotsukura E., Torii H. et al. JAMA Ophthalmol. 2019)、2021年度より文部科学省による近視実態調査も全国でスタートしたため、日本の各地域の近視有病率も今後判明してくると思われます。強度近視になると緑内障や網膜剥離、近視性黄斑症などの失明疾患を合併するリスクが上昇することが知られており、強度近視化を防ぐことが重要視されています。そこで私達のグループでは以下の2つの研究テーマを中心に研究活動を進めています。

これまで培ってきた多施設共同研究の経験やネットワークを生かし、新規治療の治験や臨床研究を積極的に実施し、できるだけ効果の高い近視進行抑制治療の早期導入に尽力していきます。

研究キーワード:近視、強度近視、眼軸長、高次収差、ドライアイ、近視進行抑制、オルソケラトロジー、低濃度アトロピン点眼、サプリメント、屋外活動、屋外光環境、バイオレットライト

研究プロジェクト

屋外活動とバイオレットライト

屋外活動には高い近視進行抑制効果があることが知られており、台湾では国策として屋外活動時間1日2時間を目標としたプログラムが2010年に導入され、増加傾向だった視力低下児童の割合を、ついに減少傾向に転じさせることに成功したことが報告(Wu P. et al. Ophthalmology 2020)されました。コロナ禍では屋外活動自粛や近業時間の増加などのため6~9歳などの幼少期の近視化が深刻化しており(Wang J. et al. JAMA Ophthalmol. 2021)、各国でも強度近視化を防ぐため幼少期からの近視進行抑制対策を導入する必要性が増しています。

その屋外活動が近視進行抑制効果を発揮するメカニズムの1つの可能性として、我々は屋外環境に豊富に存在するバイオレットライト(波長360~400 nmの可視光線。JIS/CIEの定義より、可視光下限は360 nmと定義されている)が学童および成人の近視進行を抑制する可能性と、屋外には豊富に存在するものの我々をとりまく室内環境にはバイオレットライトがほとんどないことを報告 (Torii H. et al. EBioMedicine. 2017, Torii H. et al. Sci Rep. 2017) し、これが世界の近視人口急増の一因である可能性を2018年のアメリカ白内障屈折矯正手術学会 (ASCRS)で報告しGrand Prizeを受賞しました。この研究は、当院で実施した臨床研究にもとづくもので、2種類の有水晶体眼内レンズの分光透過曲線の違いに気づいたことが発端となりました(図)。

実際の臨床においてもバイオレットライトの有効性について次のように報告しています。4歳の強度近視児童にバイオレットライト透過眼鏡を処方し1日2時間の屋外活動を励行した結果、2年間で脈絡膜が厚くなり眼軸長が短縮し近視が改善した世界初の症例報告(Ofuji Y., Torii H. et al. Am J Case Rep. 2020)と、バイオレットライト透過眼鏡を用いた2年間の前向きランダム化比較試験を実施し一部の群で有効性を報告(Mori K., Torii H. et al. J Clin Med. 2021)しました。また、そのバイオレットライトが近視進行抑制効果を発揮するメカニズムの1つとして、OPN5(網膜神経節細胞に発現する非視覚光受容体、バイオレットライト領域内の380 nmを最大吸収波長とする)でバイオレットライトが受光されることにより脈絡膜厚が維持され、近視進行を抑制することを当科光生物学グループが報告(Jiang X., et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021)しました。さらに、眼鏡枠からバイオレットライトを発光する眼鏡を用いた探索治験(UMIN000036453:近視を有する学童を対象にTLG-001の安全性及び有効性を評価する無作為化二重盲検シュードプラセボ対照並行群間比較探索的臨床試験)が終了し、安全性が確認され、今後有効性を確認する検証治験に移っていく予定です。

【図】2種類の有水晶体眼内レンズ
ARTISAN® (Ophtec BV)・ARTIFLEX® (Ophtec BV)のレンズの分光透過曲線の違いから、ARTISAN®はバイオレットライトをほとんど透過せず、ARTIFLEX® は透過します。

代表論文