慶應義塾大学医学部 眼科学教室
慶應義塾大学医学部 眼科学教室
menu

お知らせ

交通案内

研究グループ

網膜細胞生物学

網膜老化生物学研究室(Laboratory of Aging and Retinal Biology)

メンバー

伴 紀充(研究員)、長田 秀斗(研究員)、Naymel Guzman Mendoza(大学院生)

研究テーマ

加齢黄斑変性の病態解明と新規治療法の開発

加齢黄斑変性は先進国における失明原因の上位を占め、黄斑部(網膜の中心部分)の脈絡膜新生血管を特徴とする滲出型と、黄斑部の地図状萎縮病巣とそれに伴う視細胞の喪失を特徴とする萎縮型が存在する。滲出型加齢黄斑変性に対しては、主に抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が薬物療法として用いられているが根治が難しい症例も多く、萎縮型加齢黄斑変性に対しては現時点で有効な治療法が確立されておらず、新規の治療法の確立のためには加齢黄斑変性の詳細な病態生理の理解が必須である。

研究キーワード加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration : AMD)、ドルーゼン(Drusen)、コレステロール(Cholesterol)、網膜内脂質代謝(Lipid metabolism in the retina)、脈絡膜新生血管(Choroidal Neovascularization : CNV)

研究プロジェクト

網膜内脂質代謝の制御による加齢黄斑変性の病態解明と新規治療法の開発

我々はこれまでに、加齢黄斑変性の前駆病変の中で最も特徴的な病変であるドルーゼンの主要成分が脂質であることに注目し、マクロファージ/マイクログリアを中心とした自然免疫細胞が網膜内で正常に機能することで網膜組織内の脂質代謝の恒常性が保たれることを明らかにした(Ban N et al. Impaired monocyte cholesterol clearance initiates age-related retinal degeneration and vision loss. JCI Insight. 2018 Sep 6;3(17) 図1)。さらに、網膜を構成する細胞(視細胞)の脂質代謝異常でも加齢黄斑変性様の表現型を得られることを示した(Ban N et al. Disrupted cholesterol metabolism promotes age-related photoreceptor neurodegeneration. J Lipid Res. 2018 Aug;59(8):1414-1423.)。また、その他の網膜を構成する細胞(網膜色素上皮細胞)の脂質代謝も同様に重要であることも報告されており(Storti F et al. Impaired ABCA1/ABCG1-mediated lipid efflux in the mouse retinal pigment epithelium (RPE) leads to retinal degeneration. Elife. 2019 Mar 13;8:e45100.)網膜内脂質代謝の異常が加齢黄斑変性の発症に深く関わり、網膜内の脂質代謝を制御することで加齢黄斑変性の発症予防が可能であることが示唆されている。その際の最も有力なターゲット分子は、膜輸送体で細胞内コレステロールの恒常性維持に重要な役割を持つABCA1 (ATP-binding cassette protein A1)であり、網膜組織内のABCA1を活性化することで加齢黄斑変性の病態を改善できる可能性がある。今後の研究でABCA1の活性化が加齢黄斑変性の表現型に抑制的に作用することを直接的に示すとともに、また薬物スクリーニングを含む網膜内脂質代謝をターゲットにした新規治療法の確立を目指す。

【図1】コレステロール代謝関連遺伝子をマクロファージ特異的にノックアウトすると、加齢とともに網膜に加齢黄斑変性様の変化が出現する

代表論文